たまたま見たTVニュースで、介護に疲れた71歳の夫が認知症の妻を殺害した事件が短く報じられた。やりきれない思いにとらわれるが、改めて確認したところ、昨日の毎日新聞WEB版が以下のように報じていた。(以下、赤い文字部分は引用)

 7日午後7時40分ごろ、札幌市東区北41東8の住宅で、この家に住む無職、長岡律子さん(71)が寝室のベッドの上であおむけに倒れているのを帰宅した長男(42)が発見し、110番した。北海道警札幌東署によると、長岡さんは既に死亡。無職の夫(71)が「介護に疲れ首を絞めた」と話しており、殺人容疑で逮捕する方針。
 長岡さんは5〜6年前から認知症を患っていた。夫の首や手首には刃物で傷つけたような痕があり、居間の机の上に「すまん、母さん。病院もういいわ」と記した手紙が残されていたという。同署は遺体を司法解剖して死因を調べる。
 一家は3人暮らし。長岡さんは近く入院する予定だった。


 続いて、最近、同様のニュースに接した記憶があったので探してみたところ、同じ毎日新聞WEB版が1月17日に報じた次の事件を発見した。

 千葉県警野田署は17日、同県野田市三ツ堀、無職、内野英子(ひでこ)容疑者(77)を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。逮捕容疑は、同日午前5時10分ごろ、自宅で無職の夫、東彦(はるひこ)さん(72)の胸や腹など数カ所を包丁で刺して殺害しようとしたとしている。同署によると、東彦さんは数年前から寝たきりで、英子容疑者は容疑を認め「介護に疲れた」と供述しているという。東彦さんは逮捕後に死亡しており、殺人容疑に切り替えて調べる。
 調べでは、同日午前5時20分ごろ、英子容疑者の家族から110番があった。同署員が駆けつけると、1階寝室のベッドの上に、東彦さんが血を流して横たわっていた。病院に搬送されたが、約2時間後に死亡が確認された。


 さらにこのニュース検索の過程で、2月3日の神奈川新聞に掲載された次のニュース&レポートを見つけた。

 介護施設に入所する妻(79)を殺害しようとしたとして、殺人未遂の罪に問われた小田原市、無職の男(80)の裁判員裁判の判決が2日、横浜地裁小田原支部で開かれ、佐藤晋一郎裁判長は懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)を言い渡した。
 佐藤裁判長は判決理由で「客観的には決して許されない極端な行動」と批判。一方で、被告が自身や妻の病気で思い詰めていた状況などから「強く非難することはためらわれる」と情状を酌量、刑の執行を猶予した。
 判決によると、被告は2014年10月20日、小田原市内の特別養護老人ホームで、妻の首をベルトで絞めた上、ぬれタオルで口や鼻を押さえつけ、殺そうとした。
  ◇「体力あるうちに」
 身も心も、限界だった。腰椎狭窄(きょうさく)症に5年ほど前から続く抗うつ薬の処方、さらに頸椎(けいつい)を骨折し、総胆管結石も患った。「心中以外に、方法はないと思っていた」。裁判官や検察官から動機について繰り返し問われたが、被告は無表情で繰り返すだけだった。
 首にコルセットを巻き、医療用チューブを腹部に装着した姿で出廷した被告。検察側の冒頭陳述や被告人質問によると、妻は2011年に脳梗塞で倒れ、左半身不随の後遺症が残った。活発で明るく、50年以上寄り添った妻。「いなくてはならない存在」だった。だが寝たきりとなった姿は「哀れ」に映った。
 14年9月、自宅で転び頸椎を骨折。翌10月には結石が見つかり、チューブを取り付ける手術を受けた。
 「このままでは同居の長女に迷惑を掛ける」。絶望感は深まった。だが長女に相談はできず、1人で抱え込んだ。入院先の病室で心中を決意、「体力が残っているうちに」と病院からタクシーで妻の元に向かった。妻の首を絞める腕には、点滴用の針が刺さったままだった。
 「真面目で優しく、人に気遣いができる人」で、明るく振る舞っていた被告の苦しみを、長女は「分からなかった」と悔やんだ。長女によると、妻は当初「許せない」と憤っていたが、次第に拘置中の被告を心配するようになった。長女は「母はもう許していると思う」と心中を推し量った。
 「一番やってはいけないことをやってしまった。後悔と反省以外ない」と謝罪した被告に対し、佐藤晋一郎裁判長は判決言い渡し後、「これからは家族に相談して、更生の日々を過ごすよう願っています」と言葉を掛けた。


 
いずれの事件も、介護に疲れきった夫や妻が、生涯をともに歩んできた最も近しい配偶者に危害を加え、先の2件は死に至らせている。それぞれの家庭の事情はもちろん推し量るすべもないが、殺意を抱くに至るまで、この人々たちが置かれていた先の見えない困難な状況と、加害者の心を覆い尽くしたであろう暗黒色の絶望と虚無を思うと言葉を失う。生き地獄とはこうした状態を指すのではないか。

 たとえどんな事情であれ、他者の命を奪うことは許されない。なんて、あまりに通り一遍でステレオタイプの常識が虚しく聞こえるほど、この国の老人福祉の現実は厳しい。コジローの母も寝たきりのまま数年、施設のお世話になっているが、もしこの施設の助けがなければ母と自分は果たしてどうなっていたが、考えるだに恐ろしい。まして自分は特発性間質性肺炎というそこそこ厄介な病気を患っており、一人では生きていけない母をいつまで支えられるかわからないのだ。先のニュースは決して他人事ではない。

 にも関わらず、安倍内閣はこの4月から介護報酬をさらに引き下げる。介護施設が儲けぎというのだが、コジローが知るいくつかの訪問介護団体の状況など見ていると、一体どこの国の話かと思う。

 「儲け過ぎ」という判断の根拠は厚労省が実施した13年度の介護事業経営概況調査だが、回収できたサンプル数はわずか3・6%。回答作業は相当の手間がかかるとのことで、未回答事業所の多くは小規模で回答をする人手がなかったのではないかとの推測も成り立つ。こうした小規模事業所は経済的な余裕も乏しいが、こうした事業所の実態は反映されていない可能性が高い。それを知りながら、福祉に回すコストを削りたい国はこの都合の良い調査結果に飛びつき、介護報酬引き下げを強行したというのが実態ではないのか。

 介護職の月収は全産業平均に比べ今でも10万円も低い。引き上げの措置は別に取ると一応いってはいるが、これでは運営資金と人材の両面からこの国の介護は崩壊する。それが、先に連記したような悲惨な事件を惹起する社会的な裾野を広げることにつながる恐れも強い。安倍内閣が強行した消費税増税は例によって「福祉目的」を謳っていたが、今回もやはり嘘っぱちになるのだろう。そんな嘘を平気でつく政府が作るこの国は本当に、徹底的に、弱者に冷たいと思う。認知症の老人であろうと、人質であろうと。 



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 今回は久々に仕事の話題。もう一週間が経ってしまったのですが、先週の日曜日はみなべ町の山林で間伐体験を実施しました。

 森林に関心のある方々を対象に、人工林などの間伐や木材の搬出を行い、それを地域通貨など何らかの形で収入の足しにすることにより、無償のボランティアからもう一歩踏み込んで、継続的に林業の助けになってもらえる方を育てようと企画したイベントで、その名も「ホリデー木こり入門講座」。現役の勤労者であれば週末に木こりを、リタイアされた方の場合はいわば毎日がホリデーですから、第二の人生を準木こりというか林業見習い者として、趣味と実益を兼ねて頑張ってもらい、こうした人々の中からさらに将来は林業を支える新しい力として巣立ってもらえる方が生まれれば…との期待も込めています。⇒チラシはこちら

 講座は全3回。1月18日に開いた第一講では、和歌山森林インストラクター会を牽引するOさんから森林全般についての解説を受けたあと、紀州製炭組合代表のHさんから、世界一の品質で名高い紀州備長炭の製造工程について、実際に製造中の炭焼き窯を見学しながら解説してもらったり、さらに実際に付近の森林に入って山の見方などを学びました。次いで今回はいよいよ実習というわけです。

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 まず最初は安全講習。木材という重量物を扱い、またチェーンソーなどを使用する林業作業は、ひとつ間違えば深刻な事故につながる恐れがありますので、みなべ森林組合のベテラン作業員から機械の扱い方や、伐倒の際の注意点を綿密に学びます。会場は紀州備長炭振興館。受講生は29人でした。
 
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 次いで、座学の会場から外へ出て、森林組合の皆さんの援助を受けながら、チェーンソーで実際に木を切ってみます。最初はおっかなびっくりでしたが、作業を繰り返すうちに徐々に慣れ、女性も含めて全員、エンジンをかけるのも、材木の上下から切り進めて裁断するのも、機械に負担をかけずにエンジンを切るのも、そこそこスムーズにできるようになりました。ただ、チェーンソーの歯の目立ては直ぐには難しく、かなりの練習が必要なようです。

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 さらに、その次は実際にヒノキとスギの森に入っての伐倒です。今回は成長の劣る劣勢木の間伐で、倒す木は事前に森林組合の方で選んでくださっていましたが、その一本一本について倒す方向を慎重に決め、まず倒す方向にチェーンソーで受け口を作って、さらに反対側から追い口を切り込み、間に残ったツルを蝶番のようにして狙う方向に押し倒します。これも、順番に体験し大きな失敗なく倒すことができました。劣勢木とあって、そう太い木はありませんでしたが、それでも倒れるときはかなりの迫力です。

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 数本倒すと、リーダーの声で一斉に玉切り。まず枝を切り払い、3mくらいの長さに切り揃えて一箇所に積み上げます。何しろ人数が多いので、一斉に掛かれば作業も早い。倒された数本の木に大人数が寄り集まって数台のチェーンソーが一斉に唸りをあげ、やがて幹も枝も綺麗さっぱり地面から消えてなくなる様には、なんだかピラニアが獲物に殺到して跡形もなく食い尽くすような感じもしたりして(失礼)、なかなか爽快でした。

 これであとは、第3回目を残すのみ。その三回目は「木の駅サミットinわかやま」ということで、2月21日(土)と22日(日)の二日間、日本一の梅が満開のここみなべ町で開きます。
 木の駅は、森林に放置されている未利用材や、間伐などででた木材を、一定価格の地域通貨で買い取る場所のこと。買い取った材は薪に加工したり、チップ業者に引き取ってもらったりします。プロの林業事業者としてはとてもコストが合いませんが、輸送費を除いても晩酌代くらいにはなるので、生活費目的でないホリデー木こりなら充分ボラバイトになります。で、このシステムを備えた「木の駅」が今、全国で急速に広がっているのです。その全国の仲間が集まる年一回のイベントがこのサミットというわけで、これを今回、和歌山に誘致し、「ホリデー木こり入門講座」の仕上げとしたわけです。さて、全国からどのような顔ぶれが集まってくれるでしょうか。⇒チラシ&ポータルサイトはこちら


 
 数日前のブログでこのところの「鬱」な気分について書いたが、その際に念頭を離れなかった後藤さんの運命は最悪の結果となってしまったようだ。何という無念か。痛切な思いを込め、先に殺害されたらしい湯川さんとあわせ哀悼の意を表したい。

 日本政府やメディアは殺害したイスラム国のメンバーを十把一絡げに「テロリスト」と表現するが、テロリストとは本来、その手段の是非は別としても何らかの政治目的を持って直接行動に訴える者たちを指すのであり(坂本竜馬も吉田松陰もテロリストだ)、今回のように脅迫と威力の誇示のみが目的の連中は単なる殺人集団にすぎない。

 後藤さんらへの哀悼の念とともに、このような殺人集団への怒りはコジローも人後に落ちない。だが、こうした事態に至るまでの安倍内閣の対応は果たして正しかったのか、正確な事実に基づく厳密な検証が不可欠だろう。・・と、実は爆発しそうな怒りを抑えつつかなり自制をこめて書いている。

 日本人の人質がいて金銭の要求があることをも知りながら、しかもフランスで風刺画雑誌が襲撃された直後という非常に微妙な瞬間に、あえて人質を取るイスラム国と戦う国々を歴訪し、あろうことかイスラム国が米国とともに最大の敵と考えるイスラエルの国旗の前で挑発的な発言をする神経は、国民の安全に責任を負う首相の言動として、どうにも理解しがたい。さらに、まさに交戦中で敵国のひとつであるヨルダンに現地対策本部を置くという措置も、その責任者に日本イスラエル議員連盟の事務局長であって日本では数少ないイスラエルシンパの中山泰秀外務副大臣を据える人事も、何らかの考えがあっての意図的な挑発か、でなければ人質の人命など考慮していないと取られても仕方ないほど無神経のそしりを免れないものだ。

 だがまあ、この話はまた事実関係が明らかになった段階で続きを書くとして、今回はガラッと変わって大相撲の話だ。報道によれば横綱白鵬(29)が、今年初場所での自身の取組を取り直しとした勝負判定を批判した問題で、一昨日の31日、出演したテレビ番組で「多くの人にご迷惑、ご心配をおかけし、おわびしたい」と述べ謝罪した。日本相撲協会は白鵬の責任追及はしない方針を示しており、横綱の謝罪で今回の事態は幕が引かれる方向となったという。

 すでにご存じのことと思うが、白鵬は、初場所千秋楽翌日の記者会見で「疑惑の相撲が一つある」と切り出し、結果として大鵬を超える優勝回数を記録する取り組みとなった13日目の大関稀勢の里戦について、いったん行司の軍配を受けたものの審判から物言いがついて取り直しとされたことを、「子どもが見ても分かるような相撲」「ビデオ判定するのは元お相撲さんでしょ? 取り直しの重みってのは一番分かってるはずなんだよね」などと審判を批判し、相撲協会の北の海理事長らから注意を受けていた。

 これに対し、白鵬が謝罪して一件落着ということなのだろうが、コジローとしてはなんともやりきれない思いがする。白鵬は優勝回数でも表現される強さだけでなく、この独特な世界の頂点に立つ者に要求される品格からみても文句なしに大横綱だ。その白鵬をしてすらこのような発言をさせるほど、今の日本が深く病んでいると思うからだ。

 これに関連して昨年5月27日、その前の五月場所で28回目の優勝を飾った白鵬が恒例の記者会見を拒否する「事件」があった。その理由について白鵬は沈黙を保ったが世間は、NHKテレビでの解説で知られる舞の海秀平氏が場所前の「昭和の日」に行った「昭和天皇と大相撲」と題する〝記念講演〟が原因ではないかと忖度した。講演は、「昭和の日ネットワーク」という団体が開催した「平成26年 昭和の日をお祝いする集い」で行われたのだが、教育ライターの永野厚男さんが同講演の内容を『週刊金曜日』5月9日号で「〝昭和天皇万歳〟集会で舞の海氏が排外発言」と題してレポートしている。以下がその要点だ。

 (以下引用)
 「外国人力士が強くなり過ぎ、相撲を見なくなる人が多くなった。NHK解説では言えないが、蒙古襲来だ。外国人力士を排除したらいいと言う人がいる」と語ると、参加者から拍手が湧いた。〝日の丸〟の旗を手にした男性が「頑張れよ」と叫び、会場は排外主義的空気が顕著になった。さらに舞の海氏が「天覧相撲の再開が必要だ。日本に天皇がいたからこそ、大相撲は生き延びてこられた。天皇という大きな懐の中で生かされていると感じる。皇室の安泰を」と結ぶと、大拍手が起こっていた。
(引用以上)

 これについてさらに調べたところ、舞の海氏の発言自体はこの通りだが、講演全体の趣旨はかなり違っていて、舞の海氏はむしろグローバル化する相撲を肯定的にとらえ、その水準に及ばない日本人力士を叱咤する意図で発言しており、前記の拍手や「頑張れよ」の声援にも苦笑していて、話の趣旨がこれらの人たちに正しく伝わっていないと感じていたことが分かる。天皇制への賛美はまあ、この競技の出自を考えれば不自然ではないし、舞の海氏の相撲観を披歴しただけのことでもあって、あえて問題にするには当たらない。

 さて、記者会見拒否から9日後に公開したブログで白鵬は、妻が4人目の子供を流産していたことを明らかにし、それを質問されることについての妻への配慮から記者会見を回避したとして、自らこの問題の幕を引いた。といった次第で、真実は白鵬本人のみぞ知るって世界だが、コジローが邪推するところ、舞の海講演の第一報を知った白鵬は、民族差別の匂いを感じ理由を伏せて記者会見を拒否、しかし同講演の趣旨を正確に知って世間の(正しい)忖度を訂正する必要を感じ、このように収拾を図ったのではないか。

 かくして問題は、大相撲の世界で唯一無二の地位に君臨する白鵬ですら、このように民族差別にきわめてセンシティブになっていることだ。今回の審判の判定について、素人のコジローにはそれが適切だったのかどうかの判断はできないし、専門家でも意見は分かれているようだ。だが、酔いのせいもあって白鵬にそう口走らせるような空気が今の日本に充満していることは、残念ながら認めざるを得ない。大鵬を超えた大横綱とはいえまだ29歳の青年。孤高の地位は偉大だが、その重圧にもすさまじいものがあるだろう。それは横綱になった者にしか理解できないともいわれる。加えて前述の昨今日本の空気だ。

 やはり横綱の重責を孤高に守り抜いたモンゴルの先輩朝青竜が「品格」を理由に石もて追われるごとく去り(これにも相当な憤りを覚える)、そのあとをまたたった一人の横綱として日本の国技大相撲を一身に背負うこととなった白鵬。あの力士リンチ死亡事件と八百長事件で相撲が存亡の危機に立ち至ったとき、もし白鵬がいなければ連日満員御礼に沸いた先場所の復興などもちろん望むべくもなかったし、下手をすれば大相撲が本当にこの世から消えていた可能性だってあったのだ。白鵬はまさに日本の国技の救世主だった。この大横綱がさらなる大記録に臨めるよう、余計なことを考えず目の前の相撲に集中できる環境をと願ってやまない。卑劣なヘイトを許すな!