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 特発性間質性肺炎を発症して、森林限界を抜くような高山の登頂や、重荷を担いでの厳しい登山はドクターストップになってしまいましたが、実に幸運なことに、たまたま森林インストラクターの受験勉強をしっかりやったおかげで、自然を観察する基本的な知識を得ることができました。そこでそれを活用し、低山の森をウロウロして植物を観察する新たな趣味を見つけました。人間万事塞翁が馬なのですよね。

 昨年まで、ゴールデンウイークといえば、喜び勇んで雪山に出かけていたのですけれど、今年は私が所属する「紀峰山の会」の山仲間たちがいくつも計画を組んで白馬や槍に向かう計画の留守本部(遭難事故等に備えて山行計画ごとに指定を義務付けている緊急連絡先)を引き受けるくらいしかありません。しかし、せっかくの連休を留守本部だけというのはシャクなので、森歩きを会の正式の山行として登録し、三つの低山で森林観察を行ってきました。  

 まず5月3日に訪ねたのは福井県坂井市の雄島。観光名所の東尋坊の北にある、橋で陸地と繋がれた無人島で大湊神社が鎮座し、島全体が鎮守の森として守られてきたことから、見事な照葉樹の海洋性原生林が残されています。

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 雄島全景。正面の鳥居から階段を登ると大湊神社の社殿に出ます。そこから島の中腹を周遊する道をたどりました。

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 社殿にあったタブノキの堂々たる大木。タブは照葉樹林を代表する樹木ですが、海岸近くの人間が利用しやすい場所に生えていたためほとんどが伐採され、照葉樹林域にある和歌山でも今はほとんど見ることができません。まして、このような大木を見るのは初めてでしたが、この島には老成したタブの巨木が林立しており実に壮観でした。先に訪ねた綾の照葉樹林は内陸部にあるため、タブもなくはありませんでしたが、主役は圧倒的にイチイガシやシイ類で、こことはかなり様相が異なります。

 ついでですが、タブノキはコルク層が発達していて、触った感触が非常に優しい。どことなく、南国のおおらかさを感じさせる木なのです。

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 あまり良い写真が撮れなかったのですが、社殿を出てタブノキの巨木林をたどると林床にはちょうど開花期を迎えたウラシマソウが多く見られました。ウラシマソウは天南星(てんなんしょう)の一族で、花に見える仏炎苞内の肉穂(にくすい)花序から長く伸びた付属体を浦島太郎の釣り糸に見立ててこの名前が付いたとか。ちなみに肉穂花序とは、ミズバショウの中心に見られる棒状の物で、あれがこのウラシマソウの仏炎苞の中に隠れているわけです。

 さて、天南星族の生態は実に興味深いものです。天南星の仲間はすべて雌雄異株ですが、発生してしばらくは性別はなく、少し成長するとまず雄株になり、さらに成熟して雌株となります。子孫を残す、植物でいうと種子を作るのはやはり相当エネルギーを消耗する大変な作業のようで、成熟して根茎にかなり栄養分を蓄えないと雌株にはなれないのだと考えられています。
 
 また、受粉の仕組みも面白い。天南星族の受粉を媒介するのはハエやハナアブなどですが、蜜を求めて雄株の仏炎苞から中に入った虫は上に戻ることができない仕組みになっていて、下へ下へと誘い込まれて花粉まみれになり、巻きスカートのようになっている仏炎苞の最下部の隙間から、ようやく全身に花粉をまとって脱出することができます。

 そして次に雌株の仏炎苞に入ってくれれば、天南星側にとってはめでたく受粉成立なのですが、雌株の巻きスカートの最下部は閉じられていて脱出することはできません。つまり、受粉の役割を終えた昆虫はそこに閉じ込められて死ぬしかないのです。今回のウラシマソウは若いのでまだありませんでしたが、以前、同じ天南星族であるマムシグサの雌株を切り開いて調べてみたところ、数匹のハエが息絶えていました。 ん~、やっぱ、植物であってもメスは恐ろしい。(^_^;) ま、冗談はさておき、こうした植物と動物の関係を見ていると、やはり地球の主役は植物なのだという気がしてきます。

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 林を抜けると明るい草原状となり、そこここにナルコユリがひっそりと花をつけていました。よく似たアマドコロとは、花の基部に短い柄があることで区別できます。


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 島を半周するとまた照葉樹の森となりますが、北側はヤブニッケイの純林となります。ヤブニッケイに限りませんが、照葉樹の森を人間の目線の高さから樹冠部にかけて見ると、このように木の幹が複雑に錯綜した、なんというか、暑苦しい雰囲気です。

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 が、中に入ってみると、こんな感じ。下の方は結構すいているのですね。写真にはうまく撮れなかったのですが、森の中から見上げると、縦横に発達した枝と常緑の葉が空を分け合うようにモザイク模様を描いています。実に生命力に満ちた森なのです。

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 最後は和歌山ゆかりのキノクニスゲ。やはり照葉樹林でよく見かける下層植生で、雄島が分布の北限になるそうです。花は終わっていましたが、よく似たヤブランと混生していました。ちなみに葉の断面がM字になるのがキノクニスゲ、V字になるのがヤブランで、触れればすぐに識別できます。


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