数日前のブログでこのところの「鬱」な気分について書いたが、その際に念頭を離れなかった後藤さんの運命は最悪の結果となってしまったようだ。何という無念か。痛切な思いを込め、先に殺害されたらしい湯川さんとあわせ哀悼の意を表したい。

 日本政府やメディアは殺害したイスラム国のメンバーを十把一絡げに「テロリスト」と表現するが、テロリストとは本来、その手段の是非は別としても何らかの政治目的を持って直接行動に訴える者たちを指すのであり(坂本竜馬も吉田松陰もテロリストだ)、今回のように脅迫と威力の誇示のみが目的の連中は単なる殺人集団にすぎない。

 後藤さんらへの哀悼の念とともに、このような殺人集団への怒りはコジローも人後に落ちない。だが、こうした事態に至るまでの安倍内閣の対応は果たして正しかったのか、正確な事実に基づく厳密な検証が不可欠だろう。・・と、実は爆発しそうな怒りを抑えつつかなり自制をこめて書いている。

 日本人の人質がいて金銭の要求があることをも知りながら、しかもフランスで風刺画雑誌が襲撃された直後という非常に微妙な瞬間に、あえて人質を取るイスラム国と戦う国々を歴訪し、あろうことかイスラム国が米国とともに最大の敵と考えるイスラエルの国旗の前で挑発的な発言をする神経は、国民の安全に責任を負う首相の言動として、どうにも理解しがたい。さらに、まさに交戦中で敵国のひとつであるヨルダンに現地対策本部を置くという措置も、その責任者に日本イスラエル議員連盟の事務局長であって日本では数少ないイスラエルシンパの中山泰秀外務副大臣を据える人事も、何らかの考えがあっての意図的な挑発か、でなければ人質の人命など考慮していないと取られても仕方ないほど無神経のそしりを免れないものだ。

 だがまあ、この話はまた事実関係が明らかになった段階で続きを書くとして、今回はガラッと変わって大相撲の話だ。報道によれば横綱白鵬(29)が、今年初場所での自身の取組を取り直しとした勝負判定を批判した問題で、一昨日の31日、出演したテレビ番組で「多くの人にご迷惑、ご心配をおかけし、おわびしたい」と述べ謝罪した。日本相撲協会は白鵬の責任追及はしない方針を示しており、横綱の謝罪で今回の事態は幕が引かれる方向となったという。

 すでにご存じのことと思うが、白鵬は、初場所千秋楽翌日の記者会見で「疑惑の相撲が一つある」と切り出し、結果として大鵬を超える優勝回数を記録する取り組みとなった13日目の大関稀勢の里戦について、いったん行司の軍配を受けたものの審判から物言いがついて取り直しとされたことを、「子どもが見ても分かるような相撲」「ビデオ判定するのは元お相撲さんでしょ? 取り直しの重みってのは一番分かってるはずなんだよね」などと審判を批判し、相撲協会の北の海理事長らから注意を受けていた。

 これに対し、白鵬が謝罪して一件落着ということなのだろうが、コジローとしてはなんともやりきれない思いがする。白鵬は優勝回数でも表現される強さだけでなく、この独特な世界の頂点に立つ者に要求される品格からみても文句なしに大横綱だ。その白鵬をしてすらこのような発言をさせるほど、今の日本が深く病んでいると思うからだ。

 これに関連して昨年5月27日、その前の五月場所で28回目の優勝を飾った白鵬が恒例の記者会見を拒否する「事件」があった。その理由について白鵬は沈黙を保ったが世間は、NHKテレビでの解説で知られる舞の海秀平氏が場所前の「昭和の日」に行った「昭和天皇と大相撲」と題する〝記念講演〟が原因ではないかと忖度した。講演は、「昭和の日ネットワーク」という団体が開催した「平成26年 昭和の日をお祝いする集い」で行われたのだが、教育ライターの永野厚男さんが同講演の内容を『週刊金曜日』5月9日号で「〝昭和天皇万歳〟集会で舞の海氏が排外発言」と題してレポートしている。以下がその要点だ。

 (以下引用)
 「外国人力士が強くなり過ぎ、相撲を見なくなる人が多くなった。NHK解説では言えないが、蒙古襲来だ。外国人力士を排除したらいいと言う人がいる」と語ると、参加者から拍手が湧いた。〝日の丸〟の旗を手にした男性が「頑張れよ」と叫び、会場は排外主義的空気が顕著になった。さらに舞の海氏が「天覧相撲の再開が必要だ。日本に天皇がいたからこそ、大相撲は生き延びてこられた。天皇という大きな懐の中で生かされていると感じる。皇室の安泰を」と結ぶと、大拍手が起こっていた。
(引用以上)

 これについてさらに調べたところ、舞の海氏の発言自体はこの通りだが、講演全体の趣旨はかなり違っていて、舞の海氏はむしろグローバル化する相撲を肯定的にとらえ、その水準に及ばない日本人力士を叱咤する意図で発言しており、前記の拍手や「頑張れよ」の声援にも苦笑していて、話の趣旨がこれらの人たちに正しく伝わっていないと感じていたことが分かる。天皇制への賛美はまあ、この競技の出自を考えれば不自然ではないし、舞の海氏の相撲観を披歴しただけのことでもあって、あえて問題にするには当たらない。

 さて、記者会見拒否から9日後に公開したブログで白鵬は、妻が4人目の子供を流産していたことを明らかにし、それを質問されることについての妻への配慮から記者会見を回避したとして、自らこの問題の幕を引いた。といった次第で、真実は白鵬本人のみぞ知るって世界だが、コジローが邪推するところ、舞の海講演の第一報を知った白鵬は、民族差別の匂いを感じ理由を伏せて記者会見を拒否、しかし同講演の趣旨を正確に知って世間の(正しい)忖度を訂正する必要を感じ、このように収拾を図ったのではないか。

 かくして問題は、大相撲の世界で唯一無二の地位に君臨する白鵬ですら、このように民族差別にきわめてセンシティブになっていることだ。今回の審判の判定について、素人のコジローにはそれが適切だったのかどうかの判断はできないし、専門家でも意見は分かれているようだ。だが、酔いのせいもあって白鵬にそう口走らせるような空気が今の日本に充満していることは、残念ながら認めざるを得ない。大鵬を超えた大横綱とはいえまだ29歳の青年。孤高の地位は偉大だが、その重圧にもすさまじいものがあるだろう。それは横綱になった者にしか理解できないともいわれる。加えて前述の昨今日本の空気だ。

 やはり横綱の重責を孤高に守り抜いたモンゴルの先輩朝青竜が「品格」を理由に石もて追われるごとく去り(これにも相当な憤りを覚える)、そのあとをまたたった一人の横綱として日本の国技大相撲を一身に背負うこととなった白鵬。あの力士リンチ死亡事件と八百長事件で相撲が存亡の危機に立ち至ったとき、もし白鵬がいなければ連日満員御礼に沸いた先場所の復興などもちろん望むべくもなかったし、下手をすれば大相撲が本当にこの世から消えていた可能性だってあったのだ。白鵬はまさに日本の国技の救世主だった。この大横綱がさらなる大記録に臨めるよう、余計なことを考えず目の前の相撲に集中できる環境をと願ってやまない。卑劣なヘイトを許すな!


関連記事
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yamatomori.blog.fc2.com/tb.php/132-6544ffdc