3月7日、紀峰の会「なでしこ班」の企画山行で奈良の「春日山原始林」に行ってきました。この程度の高低差ならなんとかご案内できるだろうと考えてのコジローの提案。女性ばかり4人の会員が参加してくださって実現しました。ちなみに紀峰山の会では6つある班ごとに今年3月から来年2月までの年間山行計画を作成しており、我が「なでしこ班」は約60の山行を企画。この春日山原始林が年度最初の山行になります。

 春日山は春日大社の神域で、同社が成立した平城京の時代・・・ということは、いまから1400年前から厳しく狩猟伐採を禁じ保護してきたということで、まさに「原始」の森が残されている国の特別天然記念物。また、「古都奈良の文化財」を構成する8つの文化要素の一つとして世界文化遺産にも指定されています。植生としては基本的には暖帯性の照葉樹林なのですが、より南方系の植物要素も見られるようです。

 7時前に和歌山を出発して、春日大社の駐車場に8時15分に到着。身支度を整えて8時半から春日山遊歩道を北入口から歩き始めました。

DSCF3702.jpg

 遊歩道の入口にある石標。ゆるやかに登ってゆく道路はよく整備されていて、左右の植物を観察しながら歩くのに最適です。いまは冬なので落葉樹が葉を落としていているため林内は明るい。葉をつけていてよく目に付くのは、スダジイやコジイ(ツブラジイ)、ツクバネガシ、ウラジロガシ、アセビ、カゴノキ、モミ、スギなど。落葉樹では、ケヤキ、ムクノキ、各種のカエデ類、それから巨大なフジも見かけました。伐採されていないだけに、見事な大木も多いのですが、残念ながら写真にはなりにくい・・(^_^;)

DSCF3703.jpg

 樹木などの解説も交えながら、ゆっくり歩いて9時50分には三笠山(=若草山)山頂(342m)に到達。曇っていましたがなかなかの見晴らしで、左手に金剛山がゆったりと聳えていました。また、この付近だけ、アセビが多くの花をつけていました。日当たりが良い分、林内の個体より早く咲くのでしょうか。

DSCF3705.jpg

 奈良公園といえば、やはりこの子たちを外すわけにはいかないでしょう。若草山周辺にも多くいましたが、春日大社におわす神様の使いです。

DSCF3706.jpg

 若草山から遊歩道は春日山ドライブウエイと合流します。が、ドライブウエイといっても舗装しているわけじゃなく、広い地道が続くだけで、車もほとんど通らないので感覚としては歩道と同じです。その途中で見かけた山桜の巨木。・・・なんですが、やっぱ、私の写真技術ではスケール感が出ませんねえ。

DSCF3707.jpg
 

 若草山からゆっくり歩いて一時間ほどで、大原橋の分岐点に出ます。そこにあった石標。世界遺産であることが刻まれています。ここから鶯の滝への道が分岐しているのですが、まあこの水量、この山の深さから考えて、そんなに立派な滝があるはずもないので立ち寄らず、先へ進みました。そうそう、この橋のそばに東屋があって、大きな「鹿威し」(ししおどし)が時折、静かな山中に甲高い音を響かせていました。

DSCF3709.jpg

 さらに半時間弱の登りでこのコースの最高標高点である芳山交番(394m)に達し、そこから少し下ると首切り地蔵です。11時25分着。なお、交番といいますが警察関係の施設ではなくハイウエイのチェックポイントのことです。

 首切り地蔵はその名のとおり首のところで切れた跡がありますが、これは荒木又兵衛が試し切りしたためとか。まあ、ありそうもない話ですけどね。それから、この写真では小さく見えますが、この地蔵さん、人の身長を上回る高さがあります。となりの小さなのが標準サイズ(?)の地蔵さんですので、比較してみてください。

DSCF3710.jpg

 首切り地蔵のそばにはこのような東屋とトイレが整備されています。ここで昼食としましたが、いやあ寒かった。

 ここから、再び遊歩道に戻ったのですが、トイレの横から小川沿いに不明瞭に分岐している東海自然歩道の方を歩いたほうが、良かったかもしれません。下山してからわかったのですが、岩に刻んだ何体かの石仏は、東海自然歩道からしか見られないからです。

DSCF3700トリミング

 まだ山は冬の眠りの中といった感じで、今回の山行中、見かけた花は、本文にも書きましたが、若草山周辺のアセビ、ところどころでポツンポツンと咲いていたヤブツバキ、それからこのシキミくらいでした。

 シキミの透明感のある白い花は可憐ですが、そのシキミは「毒物及び劇物取締法」で規制されている唯一の植物として知られるほどの毒性があり、幹や枝も葉も根も含め株全体が劇物なのです。中でも実は毒性が強く、それゆえ「悪しき実」と呼ばれたことがシキミの語源と言われる程です。

 そうした性質を昔の人はよく知っていて、土葬した死体を山犬らが掘り返すのを防ぐためこの木で墓地を覆ったとか、まだ埋める前の死者の死臭を消すためにこの枝葉が焼かれ、これが抹香の元となったとも言われます。それで、関西地方ではいまも、葬式でシキミを立てる風習が残っているのですね。

 そんな人間側の思いとは関係なく、まだ色彩に乏しい早春の森でシキミはひとり、さかんに春の訪れを告げていました。

DSCF3711.jpg

 最後にもう一枚。これはカゴノキの樹肌です。カゴノキは「鹿子の木」で、ようするにこの斑点模様が鹿の子の肌模様に似ていることから、この名が付いたのです。一般にはあまり見かけない木なのですけど、この原始林にはたくさん生えていて、何回も間近に見ることができました。案内したメンバーたちも、この「鹿の子模様」だけはしっかり記憶してくださって、次の機会には簡単にカゴノキを識別できることと思います。

 春日山遊歩道をぐりっとめぐって南入口に達し、さらに春日大社境内の歩道を少し歩いて駐車場に戻ったのは13時半。戻ったのを待ちかねたように、それまで薄暗かった空から大粒の雨がこぼれ落ちてきました。これはラッキー、やはり日頃より善行は積んでおくものです。その後、時間が余ったので興福寺の宝物殿でも見ていこうかと立ち寄ったのですが、駐車場が満杯で入れないほどの人だかりでしたので諦め、和歌山へ直行。15時ちょうどに無事集合地点に帰着し、パーティを解散しました。

 ま、山行とも呼べないほどの遊歩道ですが、日本でも第一級の原生の森にこんなに近くで接することができるのはすごいことです。今回は落葉樹も花もなくて寂しかったので、また機会を改めて再訪したいと思います。



関連記事
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yamatomori.blog.fc2.com/tb.php/136-116e1c55