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 国会も会期末が迫り、安保法案をめぐる情勢は最大の山場を迎えようとしている。安倍総理大臣は昨日14日、安保法案を審議する参院の特別委員会で「熟議ののちに『決めるべきときは決めなければならない』というのが民主主義のルールだ」として、今国会で成立させる意向を改めて示した。世界中で最もふさわしくない人に「民主主義のルール」など教えてもらいたくはないが、大型連休に入る前の今週中に採決することを示唆する発言だ。

 また、同じ委員会の場で総理は、「多くの国民の中で理解が広がっていないという状況も真摯(しんし)に受け止めながら理解してもらえるよう努力していきたい」とも発言している。しかし、これこそが誤解というものだ。政府の不誠実きわまりない説明ですら、国民の中で同法案が戦争法にほかならないとの理解が広がっているからこそ、国民は反対の声を上げているのだ。どの世論調査でも反対は賛成を大きく上回り、さらに今国会で採択する必要はないとの声は、採択すべしとの意見をダブルスコアで引き離して圧倒的な世論となっている。つまり、同法案に賛成の人も含め、今国会での採択に否定的な立場は相当程度広範囲に共有されている。

 民主主義が、その字面通り大勢を占める民意によりことを決する思想並びにシステムであるとするなら、政府及び国会がなすべきは、現下の圧倒的な世論に基づき、同法案を潔く廃案とする以外の選択肢はないはずなのだ。だが、「民主主義のルール」を語る首相は民意などどうあれ、国会の多数にあぐらをかいて成立を強行する考えしかないようにみえる。これだけ明白な反対世論があることを知りながら、なぜそれを一顧だにしない徹底的に反民主的な思考方法が可能なのだろうか。

 これについては、9月10日の朝日夕刊に掲載された豊下楢彦元関西学院大教授の「自己目的化する集団的自衛権」という論考が、最も的を得た回答のように思われた。豊下氏は安保法案の立法事実(どうしてその法律が必要であるかを説明する事実)として安倍政権が主張する「安全保障環境の激変」なるものが、集団的自衛権ありきの結論を前提に取り繕った屁理屈であることを過去の安倍首相の言動から論証したうえ(だから朝鮮半島有事で米艦船が邦人を救助輸送するというありえない珍妙な想定がでてくる)、安倍首相には同氏なりの理想の国家観があり、氏にとっての集団的自衛権はその国家を実現するうえで不可欠の要素だといった趣旨の説明をしておられる。

 安倍首相は04年の著書で「軍事同盟は『血の同盟』だ」と定義したうえで「今の憲法解釈では、日本の自衛隊はアメリカが攻撃されたときに血を流すことはない」として憲法を攻撃している。つまり、「青年が国家の大義のために血を流し、これら青年を国民が熱狂的に支える、という国家こそが本来あるべき国家なのであるが、戦後の日本においては、憲法9条と東京裁判史観によって『骨抜き』にされてきたというのが、安倍首相の根底にある認識であろう」と豊下氏は言う。要するに、安倍首相にとり集団的自衛権は、憲法の制約を突破して氏が想定する「あるべき国家像」を取り戻す課題ということなのだ。豊下氏の論考のタイトル「自己目的化する集団的自衛権」はこのことを表現している。

 以上のような豊下氏の論旨を受けて考えてみた。米国が主導する戦争で集団的自衛権の行使により日本ではない遠い地球のどこかで日本の青年が血を流し命を落とす、これに対し国民が復讐心に燃えて熱狂し挙国一致に団結するような国。それこそが安倍晋三にとっての「美しい国」であり、「取り戻したい日本」にほかならない。これが、国家という抽象的な存在に具体的な形を与える安倍晋三の美意識なのだ。その発想のグロテスクな醜悪さと古さ、さらに言えば幼稚さに身の毛がよだつが、美意識自体は個性の範疇において自由なのであって政策論争の争点にはなりえないし、また個性の発露であるため他の美意識との共存もあり得ない。にもかかわらず、そうした個人的な美意識の実体化を政治の目標とするがゆえに、それを理解しないものの反対など原理的に熔解しえないというのが、安倍政治の実態ではないのだろうか。

 あえて言わせてもらが、これこそがファシズムである。ヒトラーはドイツロマン派芸術を体現する国家、つまり「ナチ第三帝国」を夢想し、それを理想国家としてその建設の邪魔になるユダヤ人や共産主義者そしてさらには民主主義者を徹底的に排撃した。常に妥協の産物としてしか機能しない民主主義政治と、どこもまでも純化してやまない個人の美意識は原理的に両立しない。肥大化した自己像に陶酔するだけでなく、妄想的観念の実現を政治目的とする安倍晋三は、首相以前に民主主義国の政治家としてすでに失格ではないのか。安保法制の行方にかかわらずファシズムの復活を阻止するために、安倍晋三は一刻も早く退場させなければならない。



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