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 安倍首相は2日、韓国ソウルの青瓦台で就任後はじめて朴大統領と会談し、旧日本軍の慰安婦問題につき、早期の妥結を目指して交渉を加速することで合意した。安倍内閣を決して支持はしないが、その安倍内閣こそが惹起した隣国との異常な緊張関係を少しでも和らげる措置に異議はない。合意したからには、双方歩み寄って慰安婦問題の最終的解決をこの機会に必ず実現してほしい。今ならまだ47人の元慰安婦が存命というが、残された時間は短い。国家のメンツもあるだろうが、最優先さるべきはこの方々の人間としての尊厳の回復だからだ。

 解決策は、かつて河野談話の実践として設立された「女性のためのアジア平和国民基金」の再生活用が最も適切だろう。同基金は設立当時、日本が「法的責任」(「人道上の罪」といった新しい法概念)を認めずカネで解決しようとしたとして、またその金も民間の拠出に頼り国庫から出資しなかったことから、主として左翼やフェミニズムの側から批判を浴びた。韓国ではさらに激しく,、慰安婦問題に取り組んできた韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)を急先鋒に強い批判があり、同基金から見舞金を受け取った元慰安婦が「裏切者」呼ばわりされるような悲劇すら生じた。

 だが、今にして思えば、同基金は日韓双方の顔を立てつつ慰安婦に国家が謝罪するという難問を見事に解いた、両国外交苦心の作品だったと思う。慰安婦問題を含め戦争に伴う財産請求権の問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みというのは日本側の一貫した立場だ。かつての日本の侵略戦争に反省を迫る見地からは身勝手な逃げ口上と思えるだろうが、国と国との関係はやはりどこかで妥協して次へ進んでゆかねばならない。その経緯はどうあれ日韓双方が一度は合意して結んだ協定が反故になれば、他の国々と結んだ戦後処理の協定の安定性も損なわれ、ハチの巣をつついたような騒ぎとなって収拾がつかないことになりかねない。日本の主張は当然だろう。

 だが、河野談話は国家としての法的責任への言及を巧みに回避しつつ、また「財産請求権は解決済み」という国としての主張は曲げないまま、政府として当時の国の道義的責任に深く言及し、耐え難い苦しみを与えた元慰安婦に明確に謝罪した。また基金による償い金が元慰安婦に手渡されるに際しては、橋本、小渕、森、小泉の各総理大臣名による贖罪の手紙が添えられた。この手紙は是非お読みいただきたいが、率直な謝罪や反省の気持ちと元慰安婦が受けた苦しみへの真情のこもった名文だ。さらに、財産請求権を認めない立場上、償い金の原資は民間からの拠出金に限ったが、元慰安婦の医療や福祉に役立てる部分や基金の運営などには政府の資金が充てられている。実質的に国は基金に出資しているのだ。重視されたのは、法的責任は認められないものの、それに代えて道義的政治的責任を明確に認めて謝罪し元慰安婦が受けた苦しみを癒すことだった。

 これ以上、国家に何を求めようというのか。かつての侵略戦争について日本の法的責任を明らかにするという主張はもちろん理解できる。だが慰安婦問題の主役は元慰安婦にほかならない。この問題については、その元慰安婦の方々が慰撫され救われることこそが大切なのであって、国家に法的責任を認めさせることが、それに優先するはずはない。いま大切なのは、かつては保守の側こそが積極的に支持した河野談話+「女性のためのアジア平和国民基金」+首相の詫び状という原点に立ち返って、再度韓国側との合意を成立させることだ。特に基金は広く国民に呼びかけてさらに充実させたい。歴史問題の解決に国民が直接参加する道があるのはとても良いことだ。

 朝日新聞が吉田談話報道を誤報と認めたことをきっかけに、慰安婦問題自体がなかったかのような歴史修正主義的な主張がまかり通っている。問題は、安倍首相その人がこうした誤った認識にあるのではないかと日韓双方に疑われていることだ。また、韓国には先の挺対協をはじめ「法的責任」に凝り固まる世論があり、これが韓国政府の行動に大きな制約を与えている面もある。こうした困難はあるが、双方のリーダーに元慰安婦の心情を思う気持ちがあれば、先の原点に返っての解決は可能だろう。安倍首相にその度量があるかは疑わしいが、自民党内にも原点回帰を進言する議員がいるとも報じられている。まだ生き残っているこうした良識や野党、国民の声も集めて、積年の難問解決に、行動すべきは今なのだ。 




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