またいやなものを見せられた。
 昨日朝、舛添要一東京都知事が辞意を表明。これで、これまで氏の「みみっちい」金の使途を巡り繰り広げられていた狂騒は一段落、メディアは次の都知事候補に目される顔ぶれをあげて、またぞろお祭り騒ぎの準備に怠りない。

 で、その映像では都民がインタビューに答えて小池某だの蓮舫某だの果てはアイドルのオヤジ殿だの橋下某だの、喜々として挙げているのだから呆れ果てる。もちろん編集する側の意図が働いて作られた映像に違いないのだけれど、過去の選挙結果や繰り返し安倍の支持率にびっくりさせられる世論調査の結果等に照らして、まあ、これがいわゆる我が主権者たちの平均像とそう遠くないことは認めざるを得ない。

 舛添氏の体たらくはお粗末の限りで弁解の余地はないし、辞任もやむなしとは思うがしかし、ここに至るまでの国を挙げての連日のバッシングぶりはどうだ。あえて「たかが」と言わせてもらうが、舛添問題とは要するに政治資金で趣味の絵画を買ったとか漫画本の「クレヨンしんちゃん」を買ったとか、別荘に公用車で行ったとか、正月に家族連れで泊まったスパランドで会議をしたとかしないとか、もちろん放置はできない腐敗ではあるものの、それで首都の政治経済福祉等に何か大問題が起きたというものでもない。まして、日本国レベルで何か不都合が起きるものではない。え?、リオ・オリンピック? んなもの、ブラジルでは一言も報道されちゃいないそうだ。五輪旗の受け取りなんて、誰が行ったっていいんだよ。(コジローは「ウソと汚いカネにまみれた東京オリンピックは返上」が正道と思うが、それはここでは置く)

 都知事の無駄遣いや腐敗といえば、あのアナクロ石頭じゃなかったアナクロ石原の方がはるかにひどかったという。石原は都庁に出勤することすらめったになくヘイト発言で老害をまき散らすばかりだったのだ。といった次第でその性根の悪さの程度で言えば、舛添などハダシで逃げ出すほどなのだが、メディアも都民も石原を叩くことなど一切なかった。要するに、相手次第なのだ。どこからかサインが出るのか、それとも空気を読んでの自然発生なのかはよくわからないが、叩いても許されるとなれば一気に多数を頼んでとことん徹底的なバッシングの嵐になる。で、これに都民も国民も大喜びで追随してお祭り騒ぎになるのだ。このメディアと国民とが共鳴しあっての付和雷同ほど不気味で恐ろしいものはない。冒頭に「またいやなものを見せられた」と書いたのは、この国に暮らす普通の人々の間に根強くはびこる軽薄さと一種の狂気をまたもまざまざと再確認させられたからだ。   

 今更いわずもがなかもしれないが、政治とカネの問題なら、甘利明経産大臣TPP担当相やその秘書が業者からUR(都市再生機構)の道路用地買収の補償問題で「口利き」を依頼され、金品を受け取った疑惑の方がはるかに重大だ。こちらは、「クレヨンしんちゃん」どうこうなどという牧歌的な話ではなく、それによって特定業者が得る利益の一部を還元させる代償に、大臣ないしは有力政治家の立場を利用して国家行政をゆがめたという問題なのだ。こんな手合いを無傷で放置しておいて民主政治が機能するはずはない。

 その甘利は野党の追及に耐え切れなくなって今年1月末に大臣を辞したのち、2月16日に「睡眠障害で一カ月の自宅療養が必要」というなんともうらやましくも都合のいい診断書を提出して逃亡、一カ月過ぎると「さらに2カ月自宅療養」の好都合診断書を再び出して隠れ、その2カ月たった5月16日以降は診断書なしの「ずる休み」を続け、6月1日、野党が疑惑を追及できる国会が閉会したのを見届けて同月6日、突如復帰宣言をして政界に戻ってきたのだ。

 検察はあっせん利得処罰法での立件を見送ったが(これ自体おかしい、まもなく始まる検察審査会での審査に注目だ)、政治的道義的責任はまぬかれない。だが、国会閉会中も開催可能な政治倫理審査会は25委員中18人を自公が占めており、よほど世論が盛り上がらなければ開催される見込みはないが、メディアは一言も報じない。ついでにいえば、政倫審は疑惑をもたれた政治家が自らの潔白を証明するために開催を求めることもできるのだが、甘利がそんなことやるはずはないだろう。

 一方、舛添の方も、問題は結局うやむやのままで真相は依然闇の中(例えば正月に会議をした出版社社長とは誰か)なのだが、これを解明するうえで議会の宝刀となるべき百条委員会設置の提案は自公の反対で葬り去られた。だが、メディアはこうした事実もほとんど伝えない。では、これまであれほど追及してきたマスゾエ疑惑報道とは一体何だったのだ。付和雷同世論と一緒になって首さえ取れれば、それで祭りは終わりなのか。

 コジロー同様、今回の舛添騒動を冷めた目で見ている人も少なくはないと思う。舛添を推した「製造者責任」に頬かむりする自公に対し、参院一人区同様、市民主導で統一候補を模索する動きもある。まもなく参院選挙、そしてまたぞろ都知事選。それがこの国の正気と狂気の程度を図る指標となりそうな気がする。 



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