この病院でこれまでの病名診断が異なる可能性があることが指摘されたことについては昨日のブログで書きました。そうして新しく出会った慢性過敏性肺炎(CHP)とは一体いかなる病気なのか。昨日に続き極めて個人的な持病の話題ですし、もとより医療従事者ではありませんから患者として調べられた範囲に過ぎないのですけれど、職場の仲間や親しい知人にわかりやすく説明するつもりで書いておこうと思います。

 どこから説明するか迷いますが、とりあえずざっくりと一番初歩的なところから肺炎についてです。肺炎は大きく分けて、気管支から肺に至る組織いわば肺の内側が炎症を起こすものと、肺を取り巻く組織=間質つまり肺の外側が炎症を起こして壊れガス交換機能が阻害されるものの大きく二つに分かれます。ご存知のとおり肺炎は死亡原因の上位にランキングされる怖い病気ですが、風邪を拗らせてもなるくらいありふれた疾患という一面もあり、前者の場合は治癒すれば肺機能は回復し損傷を残すこともありません。一方、「間質性肺炎」と呼ばれる後者による肺機能の障害は不可逆的で、一度失われた機能が回復することはありません。

 この間質性肺炎も大きく二つに分けることができ、うちひとつは原因がはっきりしているものでわかりやすく言うとフツーの間質性肺炎、そして今ひとつは原因がわからないものでこれが特発性間質性肺炎と呼ばれます。特発性間質性肺炎はさらに6つばかりのタイプに分類されており、一番多いのが肺線維症(IPF)でこれが7割程度を占め、次いで私が診断された非特異性間質性肺炎(NSIP)が1割程度、残り2割が他のタイプになります。

 一方、原因がわかっているフツーの間質性肺炎の方ですが、こちらは原因となる要因として大きく、薬剤、膠原病、そして環境が挙げられています。薬剤では例えば抗がん剤のイレッサですが、これを投与された患者の多くがその副作用で間質性肺炎となり薬害訴訟が起こされたことは記憶に新しいところです。その他、間質性肺炎を副作用に上げている薬剤は結構あり、漢方の中にも原因となるものがあります。次に膠原病とは関節リウマチや強皮症など全身の結合組織の変性を原因に発症する病気の総称で、この病気の影響で間質性肺炎がこれら膠原病の発症の後または前に発生することがわかっています。そして最後が環境要因によるもの。問題の慢性過敏性肺炎(CHP)は、この環境要因により発症する間質性肺炎なのです。

 ついでながら過敏性肺炎には慢性だけでなく、急性、亜急性のものもあるのですが、これらは気温が上がると活性化する環境中の真菌類を吸い込んで一時的に肺の機能低下を引き起こすもので、もちろん重篤に至るケースもありますが環境を変えれば症状は和らぎ、秋が深まれば概ね沈静化する病態であり、また肺の内部が損傷されるケースが大半であるためここでは説明を省きます。

 ということで、やっと焦点の慢性過敏性肺炎(CHP)です。慢性過敏性肺炎も急性と同じく環境中の同じ因子を原因として発症するのですが、暴露期間がはるかに長いこともあって、発症した時点では環境要因を除去しても必ずしも病気の進行が止まるとは限らず、間質の炎症や線維化といった病態が途切れず進行するケースが多いのです。そしてこうして進んだ病変は不可逆的で、破壊されたガス交換機能が回復することはありません。こうした病態は肺線維症(IPF)や非特異性間質性肺炎(NSIP)と酷似していることから病名の診断は非常に難しく、そのため、この病気についてはまだわからないことがたくさんあるようなのですが、2009年に厚労省の指定を受けて行われた全国調査では確定診断後の5年生存率は47%程度であり、IPSよりはマシだがNSIPよりは悪いというあたりのようです。ま、別の調査結果もありあてにはなりませんが、もちろん特発性間質性肺炎同様の難敵で楽観できるような病気ではありません。

 で、対策。難敵とはいえ、特発性と違って環境に原因があることはわかっているのですから、とにかくその要因を取り除けば進行を遅らせることができる可能性があるかもしれません。ということでその要因の特定をまず急ぎます。これまでのこの病気に関連して得られた知見では、原因となりうる環境中の物質は200種類にも及ぶと推定されていますが、圧倒的に多いのはなんと鳥。2013年に実施されたCHP全国サーベイでは222症例中134人、実に6割で鳥がアレルゲンになっていました。鳥の飼育者に多い肺疾患として「鳥飼病」は以前から知られていたとのことで、これを「鳥過敏性肺炎」という名称で他のCHPから分離して取り扱うという話もあるそうです。

 では、鳥の一体何が問題かというと排泄物。鳥類は飛行用に限界まで体重を減らそうと消化時間を減らして頻繁に排泄します。その排泄物に含まれる一部のたんぱく質が羽毛などに付着するとともに空中にも浮遊しており、これを繰り返し吸引することでアレルギー症状を起こすそうです。アレルギーを惹起するメカニズムは複雑になりすぎるので触れませんが、この鳥の排泄物を発生源とするアレルゲンを吸収しても慢性過敏性肺炎を発症するのは特異な体質の人だけで、多くの人は平気か悪くても一時的な急性過敏性肺炎に罹患するだけです。まあ、なんと不公平なこと。

 次いで、原因と目されるのが、先に急性過敏性肺炎の説明でも取り上げた真菌類を原因とするもの。これは夏型過敏性肺炎と呼ばれるもので前述のような急性もありますが慢性化するものもあります。先の全国サーベイでは33人、約15%がこれに該当しました。真菌類とは要するにカビで、汚れたエアコンや加湿器、湿ったカーペットなどが発生源と考えられています。さらにその次がこれと原因は特定できないものの、住まいの環境に問題があると考えられるもので自宅型過敏性肺炎と呼ばれ先のサーベイでは25人、約11%が該当しました。先のカビ以外の様々なハウスダストが原因物質ではないかと推定されますが、対象物質が特定されているわけでなく詳しいことはわかっていません。それ以外に、藁を扱う農業者に見られる農夫肺などもありますが、詳細にわたりすぎるのでこの辺でおきます。

 さて、では自分が仮にCHPだったとしたら原因は何なのか。やはりまず鳥との関係からう疑うべきでしょう。でもどうやって? 調べてみたところ、鳥過敏性肺炎について臨床経験が豊富な天理よろず相談所病院の論文に掲載された問診表を発見しました。設問は概略以下のような内容です。

 1、鳥を飼っていますか
 2、ご自宅の庭やベランダ、隣家の庭などに鳥が飛んでくることが
   ありますか
 3、鳥の集まるところへ行く機会がありますか 
 4、鶏糞など鳥の糞を扱うことがありますか
 5、ご自宅に鳥の剥製がありますか       
 6、次の羽毛製品の中で使っているものに丸をつけてください。
    羽毛布団、羽毛枕、羽毛の服(ダウンジャケットなど)
    その他

 1〜5の回答も6問と同様に細かく選択肢があるのですが、それはまあいいでしょう。さて、まず1、4、5は該当しません。2、自宅は瀬戸内海国立公園の一角、和歌浦の小高い山の中腹にあり周囲は照葉樹林ですから、もちろん野鳥もそれにカラスもトンビも多くやってきます。鳥の声で目覚めるのがここに住む魅力の一つだったのに、それが問題になるとは思いませんでした。3、鳥の集まるところ、さてどこでしょう。鳥は代表的な森林性生物でありその圧倒的多数の種が森林を生息域としています。そして私の生きがいはまさにその森を含む山岳自然をめぐることだったのです。そして6、羽毛布団も羽毛服もそれに羽毛のシュラフも重宝して使用していました。やはり鳥のリスクは否定できないようです。

 主治医からは私が退院する前にダウン製品をすべて処分すること、以後も鳥類や羽毛製品との接触を出来る限り避けること、止むを得ず森林自然の中に出かけるときは必ずマスクを着用することを求められました。はあ、もしかしたらこれまで足繁く山や森を跋扈渉猟してきたことが、この病気の原因なのかもしれないのですねえ。なんだか、一生をかけて命がけで惚れ抜いた女性に、最後の最後、思い切り振られたような感じですよ。・・・でもまあ、それで生命を落とすならいいじゃん、これこそ本望という気もしないではないんだよねえ。なんというか、不思議に納得です。

 次いで自宅の真菌つまりカビやハウスダスト類の対策。主治医はやはり私が退院する前に、自宅を全面的にハウスクリーニングにかけるよう求められました。なんだか帰宅後は無菌室で生活するような感じです。このように長期に入院させる理由は今回の場合ステロイドパルス治療の必要が第一ですが、場合によってはアレルゲンとなっている可能性がある自宅から隔離するために入院させることもあるようです。これで好転した肺機能が、帰宅してアレルゲンにさらされた場合、急性増悪を起こす可能性があるため、入院中にそれを除去してしまおうというわけです。

 こうした帰宅後の対策を立てながら、今はステロイドパルスの第二ラウンドにチャレンジしているわけです。これで症状の急激な進行をなんとか食い止め、安全な環境に戻って慎重に対策を重ねながら、定期的な検査で病状を評価しつつ大好きな登山とは縁を切った新たな生活を穏やかに模索してゆく。もちろんうまくいく保証はありませんが、ともあれこれが私の病気に対する基本的な方針というわけです。なんかなあ、これまでめっちゃ突っぱりまくって賑やかにやってきた人生だったもんなあ、人が変わったみたいになるんじゃないかなあ・・ ま、それもいいか。 実際、どうなるかわかりませんけどね。


 

 

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