前回、退院してやっと落ち着いて、久々にブログを更新して「さあまたやるかあ」と思っていたら、その翌日の診察で即入院。前回の入院で調整し万全を期して導入したはずの免疫抑制剤の副作用と疑われる肝機能の異常な上昇(標準値の5倍)が確認されたからで、急遽これに対処し、その免疫抑制剤に代わる手段を検討するのが目的です。というわけで、この文章を書いているのはまたもや病室、こうなってくると、どちらが我が家かわかりません。

 さて、目下の腹立ちのテーマは世にはびこりいまや猖獗を極める歴史修正主義。「歴史修正」がまあ通り名となっているのだけれど、「修正」というより、「歴史捏造」または「歴史偽造」ないしは「歴史忘却」という方が正確であろう。いわく、南京大虐殺はなかった、日本軍が関与する慰安婦もなかった、731部隊もなかった、そして今回小池百合子東京都知事がなかったことにしたのは関東大震災における朝鮮人虐殺だ。周知の通り、小池知事はこれまで歴代知事(石原慎太郎という名うてのアナクロ歴史偽造主義者も含め)が行ってきた虐殺された朝鮮人への慰霊のメッセージを、一般の震災被害者と同じ範疇で弔うという論理で拒んだ。

 前述の南京大虐殺以下一連の事件が、「あったかなかったか」などといった次元の問題に論及する気は毛頭ない。んなもん議論の余地などない、あったに決まっとるのだ。殺された人数、殺された人たちの名前、不明なところは多いが事件があったこと自体に疑う余地はない。歴史偽造主義のノータリンども、「なぜそういえるのか、証拠はあるのか」などとしたり顔で突っ込んだつもりで無知を晒すのもええかげんにせえよ。すこしでも真面目に調べてみれば事件ごとにその不動のエビデンスなど掃いて捨てるほどあるのだ。一方、今なお細部に不明なところが多いのは加害者側が徹底して証拠を隠滅したからに過ぎない。軍隊も政府も本質的には殺人犯や窃盗犯と同じだ、自分に都合の悪い証拠は徹底して隠滅してきた。あえていわせてもらうが、日本の支配層はそれが特に際立っているのではないか。

 この夏は、過去の戦争を記録する番組でのNHKの善戦が目立った。安倍テレビと揶揄される政権べったりのNHKだが、制作スタッフにはジャーナリスト精神を持つ職員も健在なのだろう。ビッグデータを駆使した広島での被爆死の実相、狂気と無謀のインパール作戦、悪魔のような731部隊の人体実験、終戦後の樺太の戦闘、列島を焼き尽くした米軍の絨毯爆撃の経過など、いずれもジャーナリスト精神を感じさせる秀作揃いだった。

 で、思うのだが、こうしたドキュメンタリーを制作するに際し、NHKのスタッフがエビデンスを求めて例外なく訪うのは米国やロシアやイギリスやその他の国々の歴史資料館なのだ。そこでは、なんと見事に記録や公文書が保存されていることだろう。それを丁寧に紐解き読み進める中で徐々に真相が掘り出されてゆく。番組を見ればわかるとおり、その中には自国に都合の悪いことも少なからず含まれているが、少なくとも完全に隠蔽されてはいない。そうなのだ、歴史上に生起した良いことも悪いことも、その記録を失ってしまえば振り返ることができなくなってしまう。詳細な記録が残されていた米国やロシアなどが偉いなどと言うつもりはない。そうではなくて、近代国家であれば最低限これがフツーなのだ。

 記録や公文書は国の「カルテ」のようなものだといった人がいる。カルテを失ってしまえば病状がわからない。病状がわからなければ、治療の仕方がわからない。以前に罹患した同じ病気でもまた同じ失敗を繰り返すだろう。まして、悪性腫瘍を良性と見誤れば国は破滅だ。

 この前の戦争の開始時点でも、敗戦必至の戦況でも、さらには全国民の頭上に焼夷弾が降り注ぐ状況になってすらも、自分に都合のよい思考しかできなかったこの国の政府や軍部は、最後の局面では自分の保身を最優先に考え、それに不利となる証拠を隠滅することに全力を注いだ。最近リメイク版も上映されたが、終戦前日を描いた岡本喜八監督の名作『日本のいちばん長い日』では、官僚たちが山のような公文書を焼く映像が繰り返し出てくる。その官僚の指示を受け、地方でも海外の駐屯地(例えばハルビン郊外の731部隊でも)でも同じ情景が見られた。この世界最低最悪の国家指導者たちの敗戦間際の行状に、将来の世代が同じ失敗を繰り返さないよう教訓を残すことを考慮した形跡などまったくない。この国の政府や官僚たちが国民を皆殺しにしても守ろうとしたのは国体つまり自らが保身する国家支配の体制であり、軍が国民を人間の盾にしても守ろうとしたのは軍そのものでしかなかったのだ。

 自衛隊南スーダン派遣部隊の日報の隠蔽、森友学園問題や加計学園問題をめぐる数々の公文書の破棄、国会の答弁で繰り返される大臣と政治家と官僚たちのウソ。彼らに大事なのは保身のみであって、将来のために事実を正確に記録する意思など皆無であることがよくわかる。この国の支配層の吐き気を催すようにグロテスクな隠蔽体質は、戦争当時の政府や翼賛議会や軍部と何ひとつ変わっていない。他所の国の指導者がどの程度なのか論評するだけの知見はないが、この自分のことしか考えない最低のクズどもに国家権力を委ねるリスクは覚悟しておいたほうが良いだろう。この国はマジで危ない。

 そうした近代国家としては恥辱の限りともいうべき公文書や記録の不在に乗じて、自分が気持ち良いように歴史を作り変えるのが歴史偽造主義である。自分たちはそれで気炎を上げてハイな気分で自慰して気持ちがいいかもしれないが、モノゴトには相手というものがある。殺したほうが自作のウソで恍惚としているのを、殺された側が黙って見過ごせるはずはない。侵略戦争が終結して70年も経つというのに、日本がいまだ最も近い東アジアに仲良しの国をひとつも持てない現状は、無様というか惨めというほかない。こうなった主犯は仲良くなろうとする機運が盛り上がるたび、歴史を偽造した発言でちゃぶ台をひっくり返してきた自慰バカどものせいだ。

 まあ以前からわかっていたことだが、小池百合子もそのバカに連なる自慰バカであることを今回の事件は示した。バカには鉄槌を打ち下ろして思い知らせてやらねばと思うのだけれど、まあ、見渡せば大臣も知事も官僚もメディアもバカばっかだもんなあ。鉄槌を打ち下ろす人手が足りない一方、なによりバカどもは権力を持っているのである。ああ、まこと、世も末であるなあ。


 といった次第で、ストレスは溜まるばかりなのだが、そのストレスを相変わらず絵でごまかしている。今回は「南スーダンの難民母子」(ウォーターフォードF8)。モチーフは戦場カメラマン渡部陽一さんの公開作品です。


170630 南スーダンの母子 サイズ




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