参議院選挙は大方の予想通り自公の圧勝に終わったが、一貫して対立軸を示してきた共産党が一定の存在感を示したのが救いだった。国会は最終的には要するに数の論理で動くステージであり、その面からは「自共対決」というには力関係に懸隔がありすぎるが、ともあれ民主党やみんなの党などの「元自民」とか、維新のような「より自民」とかの自民亜流ではない、オルタナティブな政治潮流が見えやすくなったのは、今後の国民の選択にとっては良いことだ。

 ただ、次の選択は恐らく3年ほど先になる。この間に、多数の論理による暴走がこの国の進路を決定的に損なう恐れは小さくない。自公政権側は今回の選挙において、改憲や原発再稼働など、争点となって不利な対決点は極力触れずに通してきた。主張してきたのは「ねじれ解消」という整骨院のCMみたいな呪文と「日本を取り戻す」という意味不明のスローガンだけだ。だが、選挙結果を受けた各国のメディアは、さらなる近隣諸国との関係悪化の可能性が強まったことを冷ややかに伝えた。安倍内閣によって取り戻される戦前日本のアナクロ的孤立の危うさが見透かされている。

 その、危うさが早くも示されたのが、日本政府が昨日から初参加したマレーシア・コタキナパルでのTPP交渉だ。日本政府がまず求められたのは交渉内容を非公表にする「守秘契約」への署名だが、この署名でこれまでの交渉経過をまとめた数千ページ分に及ぶ電子資料の閲覧が可能になる一方、守秘契約により交渉内容は公表を禁じられ、協定発効後も4年間は交渉関連文書を秘匿する義務を負うことになる。つまり、国民の命と暮らしに直結する事柄が秘密交渉で進められ、異論も反論も封じられたうえで結果だけを押しつけられることになるわけだ。

 すでに安倍首相は日米首脳会談で、すべての関税・非関税障壁の撤廃を原則とする「TPP輪郭」を確認している。今回の交渉参加に際し日本政府は、先に書いた数千ページに及ぶ電子資料に記載されている、日本以外の参加国間でこれまでに確認した合意事項を蒸し返さないようしっかり釘を刺されている。つまり、すでに交渉が終わった関税撤廃や金融サービス分野などで日本が口を挟む余地などひとつもない。こんな状態を百も承知の上で「守るべきモノは守る」などと大ウソを言い張れる鉄面皮には恐れ入るが、それが「美しい国」の大本営発表というものなのだろう。報道はこの危機に警鐘を乱打し、国民不在の秘密交渉からただちに撤退するよう訴えるべきではないか!

 …と、思いきや、TVのニュースはどのチャンネルを選んでも、同じ映像を流して英国皇室の出産祝いで盛り上がってるのだから愕然とする。まあ、コジローもオトナであるから、めでたくないとまで天の邪鬼は言わないが、たかが地球の裏の国で男の子1人産まれたってハナシであって、それがここまで過剰に大騒ぎするネタかぁ? 実のところ、「おめでたい」のは英国ではなくて、日本の脳天気メディアと、それをへらへら笑ってみている我が国民ではないのか。

 福島第一原発では東電がようやく放射能汚染水が海に流出していることを認めた。それが投票日の翌日っていうのもナンだかなあ…なのだが、それもさりながら、この報告を受けた原子力規制委員会・田中俊一委員長が怒り心頭というならまだしも、「ま、そうだろうねぇ」って表情も、輪を掛けてナンだかなあ…なのだ。これ田中委員長に限らず我々にも共通するかもしれないが、東電のウソ隠蔽体質が当たり前になって、感覚がそれに慣れちゃったってコトなんじゃないだろうかと反省させられる。だが、事故から2年4ヵ月もたって、いまも海に放射能が漏れ続けてるって、ホントは大変なことなんだよ!

 にも関わらず、メディアは揃ってロイヤルベビー! なんなんだこの国は!


関連記事
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://yamatomori.blog.fc2.com/tb.php/49-d0536a5f