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 9月23日、高曇りの穏やかな朝になりました。アルプスの三千mを繋ぐ尾根を歩くには絶好の季節、昨年までなら和歌山にいることなんて考えられない三連休の最終日です。昨日のブログを書いた夜7時以降にはようやく痛みも和らぎ、ときどき間欠的な痛みに襲われることは相変わらずありますが、鎮痛剤の助けを借りずに夜明けを迎えることができました。

 9時になると、いつもの通り主治医の女医さんが「おはようございます」と飛び切り明るい声で病室に入ってこられます。この先生は、私が入院した先週火曜日から毎日、土曜も日曜も今日も朝9時きっかりに診察にきてくださいました。さすがに気になって、「先生、ちゃんと休んでますか?」と声をかけると、私の傷に触れながら「まあ、こんな仕事を選んじゃったもんでぇ」と例によってハキハキした明るいお返事。医師特に外科系の医師って本当に大変なお仕事だと思います。

 その診察で主治医は昨日クリップ(正確にはクランプといいます)した部分に異常がないことを確認し、即座にレントゲン撮影へ。昨日とは違い、車いすに乗せられての移動もずいぶん楽になりました。そのレントゲンの結果を即座に確認した主治医がすぐに病室にやってきて、胸腔に突っ込んでいたドレーンの抜去へ。

 このあたりの手配の速いこと。処置室で背中を医師に向けて横たわると、患部を露出した身体の上に白い紙を被せられ、直ちに局部麻酔が処方されてドレーンを抜去、ふた針縫って、背中から「これで無罪放免ですねぇ、お疲れさまでしたぁ」と主治医のいつもの頼もしい明るい声がかかるのを聞き、痛みに注意しながらゆっくり振り返ったときには、ドレーンも女医さんも消えていました。処置室から歩いて病室に戻ったのが10時、最初に朝の挨拶を交わしてから1時間もかからない間の処置でした。

 ようやくチューブだらけの囚われの身から「無罪放免」されて身ひとつの自由な身分となったからには、ベッドでじっとしている理由はないので、早速、いま一番やりたいことである樹木の観察に出かけました。といっても、いきなりアルプス1万尺というわけにはいかないので、観察のフィールドは病院の中庭です。

 この病院にはちょっとした中庭があって20種ほどの樹木が植えられ、遊歩道やベンチ、東屋なども整備されています。すでに秋口を迎えて落葉樹は色づき始め、常緑樹も老成した緑の濃い葉のみとなっています。この庭で面白いのはシラカシとアラカシの東西を代表するカシが揃って植えられていること。また、ユズリハとヒメユズリハも揃って植えられていることです。

イメージ_2

  病棟9階から見下ろした中庭、遊歩道と東屋、それに水路が見えます

 二つのカシはともに暖温帯の樹木ですが、一般にシラカシは関東を代表する一方、アラカシは西日本に多く分布しています。見分け方は常緑樹ですので葉に注目すればよく、シラカシは葉が細長く全鋸歯であるのに対し、アラカシの葉は短く鋸歯が葉の先半分にしかありません。しかし、シラカシは関東のカシとはいうものの、関東周辺の山地で見かけることはまずなく、見るのはもっぱら公園樹や庭木、社寺林の樹木としてです。

 というところで素人推理をするのが面白いのですが、シラカシは元々山には生えず、かつては広大な関東平野の平地林に優占して分布していたのではないでしょうか。それが人口増に伴う新田開発や都市の展開によって伐採侵食され、今日のように、人為的に残された部分以外では見ることができなくなったのではないか、なんて推理はいかがでしょう。

 もう一つの西日本のカシであるアラカシは紀州備長炭など薪炭材としても盛んに利用され、人為的に萌芽更新などで保護されてきたため、今もよく見かけます。なお、最高品質の紀州備長炭ができるウバメガシも、この中庭に植えられていますが、ウバメガシはブナ科コナラ属コナラ亜属に分類されるナラ類やクヌギの仲間であり、先にあげたカシ類もコナラ属ではありますがアカガシ亜属という別のグループですので、ウバメ「カシ」という名はついていますが厳密にはカシの仲間ではない点も面白い所です。

 一方、ユズリハとヒメユズリハの違いは、まずヒメと名付けられるくらいですからヒメユズリハの方が樹体が小振りであること。ユズリハの葉は大きくまばらに着いて葉裏は粉を吹いたように白く、葉脈が枝分かれする側脈は16〜18対あるのに対し、ヒメユズリハの葉はやや小さい代わりに木全体に密生してつき、葉裏は黄緑色で、側脈はユズリハのちょうど半分の8〜10対と少ない点などで見分けます。

 また、生息地はユズリハは暖温帯林の山地、ヒメユズリハは海岸に多いことでもざっとした見分けがつきます。ユズリハの仲間にはもう一種、エゾユズリハというのがあって、これはユズリハが、日本海側の多雪地帯に適応した亜種(専門用語で「日本海要素」といいます)で、この適応についても実に興味深い話がたくさんあるのですが、書き出すと止まらなくなりそうなので、今日はこの辺で。

 以上は、森林インストラクター試験に備えた受験勉強で頭に叩き込んだ知識です。試験の結果はともかく、学びは人を裏切らないもので、苦労して記憶に叩き込んだ内容は、確実にこれからの森歩きを豊かにしてくれるに違いありません。そんな時が一刻も早く実現するよう、頑張りたいと思います。
 

 
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